煎じパックって何?

「漢方薬」と言ったら、病院や薬局で処方してもらったり、ドラッグストア等で販売されている顆粒(粉)タイプのものが真っ先に頭に浮かぶ方が多いのではないでしょうか。顆粒剤の他にも錠剤、煎じ薬、丸剤、軟膏などいろいろなタイプの漢方薬があります。顆粒剤や錠剤などの漢方薬は戦後に開発された新しいものですが、古くから用いられて来た漢方薬の多くは煎じ薬です。
 煎じ薬というのは漢方薬の原料である生薬を煎じ(煮詰め)て、煎じた液体を飲むものです。もし患者さんが病院や薬局で煎じ薬を処方された場合、毎日40~80分ほどかけて生薬を煎じる作業が必要となります。この作業は忙しい現代人にとって大変な手間であり、現在で煎じ薬をあまり見かけないのはこの手間によるものが大きいと思います。
 このような煎じの手間をなくすために、日本ではエキス製剤(顆粒や錠剤など)が開発されました。エキス製剤とは、製薬工場において煎じ液から特殊な方法で水分を除去し賦形剤(ふけいざい)といわれる添加物を加えて粉末状にしたものです。これにより手間だった煎じ作業が不要となり漢方薬の服薬が非常に手軽になりました。その反面、エキス製剤へ加工する過程において、元の漢方薬(煎じ薬)とは成分量に変化が生じることが知られています。よく使われる例えとして、煎じ薬はコーヒー豆からドリップしたコーヒーで、エキス製剤はインスタントコーヒーのようだと言われます。

それでは煎じ薬をより手軽に飲めないか、ということで表れたのが『煎じパック』です。
 煎じパックとは、薬局などに設置されている専用の機械で漢方薬を煎じ、飲みやすいようパックに封入したものです(代わりに煎じてもらう場合は「煎じ代行」といいます)。漢方薬の種類によっては特別な煎じ方が必要な場合もありますが、漢方に精通したプロが最適な煎じを行うため、患者さんは品質の高い漢方薬を手にする事ができます。
 そして、多くの煎じパック利用者に喜ばれているのが、「手軽に煎じ薬を服用できる」ことです。煎じパックを開封し、コップに注ぎ、温めて飲む(もしくはパックごと湯煎する)だけなので非常に手軽に煎じ薬を服用できます。更に、煎じパックは賦形剤などの添加剤を一切用いませんので、患者さんにとっては添加剤による副作用の心配もありません。また、持ち運びもしやすいので旅行や出張、入院など自宅以外でも煎じ薬を服用することができます。
 煎じを漢方のプロに任せて『煎じパック(代行)』を利用することで、「毎日煎じる」という手間がなくなり、無理なく安心して煎じ薬の服用を続けることができるようになります。

煎じパックのご使用方法

煎じパックの飲み方

煎じ薬は温めて服用してください。

※湯煎後はパックが熱くなっています。火傷をしないように十分注意して開封してください。

上手な開封方法

①煎じパックの角を上にして持ちます。
②角から1cmぐらいのところを少しハサミで切り、パックに空気を入れます。
※最初から一気に切ってしまうと煎じ薬がこぼれる恐れがあります。
③空気が入った事を確認し、ハサミで切り取ります。
④コップを逆さにし、ハサミで切った部分にかぶせます。
⑤コップとパックを一緒に逆さにすることで、こぼさずコップに移すことができます。
⑥逆さにしたパックの先に切込みを入れると、キレイに煎じ薬が出てしまいます。

ご使用上の注意

  • 煎じパックの保存は直射日光のあたる場所や高温多湿な場所を避け、冷暗所にて保管してください。
  • 小児の手の届かないところに保管してください。
  • 生薬の成分の沈殿でオリが溜まることもありますので、振ったり揉んだりした後に開封してください。
  • 開封後は、時間をおかずに早めに服用するようにして下さい。
  • パックが破損する恐れがありますので、極端な冷凍や加熱およびパックへの強い衝撃は避けてください。
  • 漢方薬の成分が沈殿することがありますが、品質には問題ありません。よく振ってお飲み下さい。

漢方薬の豆知識

  • 漢方は日本の伝統医学

     漢方薬は中国の薬だと思っている人もいると思いますが、れっきとした日本の伝統医学です。漢方の歴史は古く、5世紀(古墳時代や飛鳥時代)頃に大陸から宗教や文化などと一緒に医療も伝来したと言われています。そこから日本人の体質や日本の風土にあわせて日本独自の発展を遂げた、日本特有の医学です。江戸時代になると西洋医学が伝来したため、西洋医学と区別するために「漢方」と呼ばれるようになりました。中国や韓国でも独自の発展を遂げており、現在は日本の「漢方」、中国の「中医学」、韓国の「韓方」とそれぞれ別のものとして確立されています。

  • 漢方薬と西洋薬(新薬)との違い

     漢方医学では病状だけでなく、体質や体調の情報を含め患者さんの状態を総合的に把握した後に薬剤(漢方薬)を選びます。このため漢方薬では同じ症状であっても患者さん毎に処方が異なることがあります。一方、西洋医学では病名や症状に基づいて薬剤を決めるので、患者さんの体質に関係なく症状が同じであれば基本的に同じ薬剤を用います。また、西洋薬はほとんどが化学合成された1つの主成分でできており、1つの症状に対して強く作用します。漢方薬は生薬(しょうやく)と呼ばれる天然由来の原料を複数組み合わせており、様々な成分が体全体に総合的に作用します。
    例えば、頭痛と鼻水の症状がある場合、西洋薬だと頭痛に効くAと鼻水を止めるBと、薬で胃が荒れるのでCという3つの薬を処方されたとします。これが漢方薬の場合、1つの薬で済んでしまうというわけです。

  • 漢方薬は長期間飲まないと効かない?

     漢方薬は長期間飲まないといけないというイメージが強いと思いますが、すぐに効果が表れるものも多くあります。例えばインフルエンザの時に漢方薬を処方された経験がある人も多いのではないかと思いますが、すぐに効かないと困りますよね。西洋医学でなかなか改善しなかった病気などに漢方が使われることが多いため、必然的に治療に時間がかかり、長く飲まないと効かないというイメージがついたのかもしれません。

  • 漢方薬には副作用がない?

     漢方薬の長い歴史の中で効果の無いものや副作用が強いものは削ぎ落され、体に優しくかつ効果的なものだけが現在に至るまで残っていますが、それでも副作用はあります。同じ漢方薬(生薬)でも、人によってお腹を下したり、胃がもたれたり、体調が悪くなる場合もありますので、是非とも専門家にご相談されることをお勧めします。

  • 漢方薬を飲んだけど効かなかった

     漢方薬はご自身の体質や症状などによって飲む薬が異なります。例えば、風邪の場合、引き始めなのか、なかなか治らないこじれたものなのか。鼻水は?咳は?本人の体質は?等ということを複合的に診て処方が決まります。このため漢方薬では同じ症状であっても患者さんによって処方が異なることがよくあります。もしかすると漢方薬が効かなかったという方は自分の体質やその時の症状に合わなかったのかもしれません。是非とも専門家にご相談されることをお勧めします。